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番外編

研究者養成課程におけるポートフォリオの活用事例

担当:佐々木嘉則

Last updated on 2006/01/29
(Y/M/D). 

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本稿の目的

研究者養成を目的とした大学院教育の指導の一環としてポートフォリオを導入した事例を報告し、その効果的な活用の方途を論じる。

実施機関の背景

独立大学院

応用言語学とは異なる分野を学部時代に専攻した学生が多いため、研究方法の基礎や研究者としての基本姿勢を大学院入学後に手ほどきすることが必要になる。入学当初は概して

研究者に必要な専門知識の三大要素

 
理論
 
 
方法
対象

大規模プログラム

日本語教育の博士前期課程に毎年15〜20人前後を入学させている。博士前期(日本語教育)〜後期(応用日本言語論)を通算して約60名の学生を専任2名、兼任3名の計5名で担当している。
本稿筆者の場合:休学中も含め20人前後の大学院生の主指導→全員と頻繁に個人面談することは無理→進歩状況を効率よく把握する必要(面談の代用、あるいは、下ごしらえとなる「問診票」)

博士前期(修士)―博士後期課程

中だるみ

主観的にはそれなりに努力(しようと)しているにもかかわらず、「何をやったらいいのかわからない」「的が絞れない」「何となく不安」

休学・退学

大学院生(特に博士後期課程)は就職や出産のため休学・退学して就職することが多い。(退学後の復学も珍しくない。)その間も引き続きガイダンスを希望する学生に対して助言を与える必要がある。

留学生・海外就職者が多い

休学期間中に海外あるいは遠隔地に住む学生→定期的な面談は無理。

ポートフォリオの目的

ポートフォリオの構成

記載項目
留意事項
ヘッダー 氏名・学年・修了予定年など  
全体目標 10/5/3/2/1年後の私の姿

(複数案可、以下同)

15年後、20年後の構想を加えてもよい

修士/博士論文のテーマ案 最初は「仮」の案でいい
研究能力の習得目標 興味を持っている研究対象/分野(その理由)
 →そのためにしたこと・すること
先に対象を決める場合もあるが、逆に理論や方法の要請にしたがって対象を決めることもできる。
深く学びたい理論/モデルなど(その理由 )
 →そのためにしたこと・すること
在学中に専門家の域に達したい目標分野を絞り込んで
身につけたい研究技法(その理由)
 →そのためにしたこと・すること
研究対象や理論とどう関連するか、考えながら書こう
その他、在学中に習得/達成したいこと 研究と関係がないことも可
研究生活基本動作セルフチェックリスト

研究の基本原則・平素の研鑽・読む技能・書く/話す技能・情報の収集・整理・ネットワークづくり・情報発信とフィードバック・身だしなみ

結果の報告は任意
各期の目標/実績 力を{入れる/入れた}こと その期の重点目標/実績
履修あるいは聴講{する/した}科目 ワークショップやカルチャーセンターの講座なども可
出席{する/した}学会・研究会等 「顔を出した」だけでも、努力の証として記録
新たに開拓{する/した}情報網
  (人脈;電脈など)
メーリングリストや投稿ボードも立派な情報網
成果{目標・実績}
 (口頭発表、論文/レポートなど)

読みたい文献の書名をあげる、あるいは「〜についてのレビュー論文を書きあげる」などして後で達成度が容易に自己判定できるように

詳細は後段の「業績リスト」「文献リスト」に書く

その他の{目標/達成事項}

「資格をとった」、「〜については自信をもって説明できるようになった」、「ソフトを使いこなせるようになった」なども立派な成果

当初目標と実績のずれ・自覚症状等 単なる懺悔に終わらせず、次期の飛躍のための踏み台に。
業績リスト

卒論なども忘れず書く。口頭発表は日付も忘れずに。長くなる場合、自分のサイトの該当ページのアドレスを記してもよい。

文献リスト 既読・再読中・初読中・未読・未入手の別を記入
       

 

利用方法

書き方

ポートフォリオを書くためのヒント

  • 先輩・同級生を含め、いろいろな人のポートフォリオを見せてもらおう。概して、「できる」人はポートフォリオもしっかり書けます。
  • 過去のポートフォリオをときどき読み返してみよう。そこに明日へのヒントが隠されているかも?
  • 基本的には自分自身のための記録だから、書きやすい/見やすいように工夫を加えて書式を改良してもよい。所定の枠組みの枝葉末節に縛られる必要はない。ただし、あまり頻繁に書式を大改革して後で比較ができなくなると困るかも?
  • いずれにせよ、重要な項目は落とさず記録しておいてください。
  • 提出したポートフォリオは上書きせず「新規保存」で次のポートフォリオを作るなどして、後日の振り返りがしやすいように工夫しよう。

提出時期

各学期の最初と最後(年4回)。つまり、4枚のポートフォリオが
  • 春学期(4〜7月)
  • 夏休み(8〜9月)
  • 秋学期(10〜1月)
  • 春休み (2〜3月)

をそれぞれカバーする。

提出方法

メール添付でファイル送付。

フィードバックの方法

コメントを書き込んでファイルごと返送。(必要があれば書き直して再提出を求める。)

迅速にフィードバックを返せる(最速15分以内)

添削時のチェックポイント(よくある不適切記入)

空欄があった場合、なぜ空欄なのか(本当に書くことがないのか)を確認。

研究能力の習得目標

(1)達成可能な範囲に絞り込まれているか?(不適切な例:「認知科学」)
(2)研究テーマとの関連性が明確か?
(3)具体的な達成方法が明記されているか?(不充分な例:「関連する文献を読む」)

業績リスト・文献リスト

(1)書誌情報の標準的な記載方法にしたがっているか?(収録ページ数など。)

これを守らないと後で論文の参照文献リストや履歴書を作成するときに再度作業せねばならなくなり、結局は二度手間。

(2)文献リストに当該分野の重要な文献が網羅されているか? 外国語文献が含まれているか?

学生の反応

批判

技術論

「ポートフォリオ評価/指導として手法が幼稚・不適切」

本質論

「手取り足取りのお節介で、大学院を小学校化するものである」

効果を出さなければ意味はない。


 

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